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辻村深月「図書室で暮らしたい」ストレートな感情あふれるエッセイで良かった!


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こんにちは、藤子です。僕は辻村深月作品が大好きなんですが、今回、彼女のエッセイ集を初めて読んでみました。 やはりめっちゃ僕好みの内容だったのでレビューを書きたいと思います。 

図書室で暮らしたい

図書室で暮らしたい

 

おととしの11月に出た本ということでまあ比較的まだ新しいほうかな。時事ネタはあんまりないけれど、直木賞受賞関連のあれこれはタイムリーだったですね。

ストレートに感情を揺さぶってくる辻村作品

僕が辻村作品を好きな理由はいくつかありますが、いい意味でものすごく感情を揺さぶられるというところが大きなポイントかな。率直に言うと、感動するストーリーを読ませてくれる筒井康隆作品のように「脳みそにビシバシと刺激が来る」という作品も大好きなんですが、王道ハートフルだったりする物語もまた良いんですよね。

今のところ辻村作品でお気に入りベストは「スロウハイツの神様」ですが、今後それを超えてくるであろう彼女の新作に必ず出会えるだろうとも思っています。 

 スロウハイツの神様の感想はコチラ↓

d.hatena.ne.jp

本作品も、「感動した」「うれしかった」などシンプルにそのときの筆者の感情が記述されていて、ほんとに感動したんだなー、うれしかったんだなー、と同調しやすいんですよね。そのストレートさ、本当に好きなんですよ。

会心エッセイ「バイキンマンのマーチ」

このエッセイ集は面白いものがたくさんあるのだけれど、最も印象に残ったのは「バイキンマンのマーチ」というバイキンマンにスポットを当てたもの。

 ある日の放送のこと。ライバル・アンパンマンの打倒に燃える彼が、憎々しげにこう呟いた。

アンパンマンはみんなの太陽。アンパンマンは輝くヒーロー……」

 みなさんだったら、この後に、何と続くと思われるだろうか。私はてっきり「気にくわない」とか「いまいましい」とか、そんなところだろうと思った。しかし、我らがバイキンマンは毅然とこう言い放った。

「そんなやつに、この俺様が負けてたまるか!」

 この叫びを聞いて、私は感動してしまった。バイキンマンの悪の姿勢にはブレがなく、彼の中では「太陽」であることや「輝く」ということは、何ら嫉妬するような魅力的なことではないのである。むしろ「イケてない」ことに分類され、自分の価値観とは違う、憎むべきこととして捉えられている。

という展開で、非常にバイキンマンに敬意を払うようになった、というお話が進んでいきます。

いやあ、バイキンマン、僕も大人になって長ずるにいたり、ほんとに力強い、いいキャラクターだなあと思うようになったんですよね。

バイキンマンは基本的に味方はいない。たった一人でアンパンマンおよびその仲間たちを倒すため、DIYで自分の基地を作り、武器を作り、システムを構築し、戦いを挑む(映画だとさらに規模がでかい!)。負けても負けてもあきらめない。くじけない。自分の信じるもののために戦い続ける。おお、これってヒーローの姿勢そのものではないか!?世が世ならアイアンマンのような立場になってたかもしれないな、バイキンマン…。

しかも悪いことをするだけではなく、たまにいいこともしたりして。奥深いキャラクターなので、子どもがもう少しアンパンマンのことを理解するようになったらこういった視点での見方もまた伝えていきたいところだなあと、決意を新たにした次第であります。

僕は年齢や状況(小さい子供がいる点など)が近しい人の書いた身辺雑記もの(育児漫画とか)ってけっこう読んじゃうんですが、さすが辻村さん、バイキンマン、いいですよね!と握手したくなりました。 その伝え方がやっぱり実にうまい。達者だ。(なお、正式表記はひらがなで「ばいきんまん」らしいのですが、本作品の表記にしたがいカタカナで記載しました)

アンパンマン ガブガブばいきんまん

アンパンマン ガブガブばいきんまん

 

胸がほっこりしたり熱くなるエッセイがたくさん

他にも素敵なエッセイがたくさんあってですね、少しずつでも読むと心の滋養になりそうなんですよね。

祖父の思い出と直木賞の思い出がクロスする「うなぎの季節」。

図書館の企画に関心しながら「本が好き」ということがしみじみと伝わる「図書館肝試し」。

ドラえもんの誕生日を祝う、ただただ祝う「今日は何の日?」。

母子手帳のとある記載に感銘を受けたという「母子手帳にできること」。

結婚式の思い出と直木賞の会場となった「東京會舘の思い出」。

保育園の迎えを忘れるという、子を持つ親としては実が震える恐怖の夢を見たという話の「怖い夢」。

ジョジョの奇妙な冒険への愛を力強く語った「権威のこちら側」の『ジョジョ」(←これページ数7ページとほかのエッセイよりもけっこう長い!)。

『輪るピンクドラム』のこと」はタイトル通り、『輪るピンクドラム』についてネタバレしないギリギリのところでおすすめの見方を紹介している。

他にもTVドラマ「相棒」について語ったり、読んでほっこりしたり愛情がたっぷりと伝わってくるエッセイがたくさん。

祖父との思い出を飲み物に絡めて描いた「味のないオレンジジュース」。これ、思わずすぐ飲みたくなっちゃったなあ。

書店という存在へのたまらない愛情がひしひしと伝わる「「岡島」の本屋さん」も好きだ。

2歳の子どもに向けて書いた手紙エッセイ「うちの子へ」はなんだかしみじみウルっときちゃいました。僕も手紙書こうかなと思っちゃったり…。

というような感じで、印象に残るエッセイがたっくさんありますので、良質のエッセイに飢えている方、辻村深月ファンの方には間違いなくおすすめです。

最後に…個人的な感情で恐縮ですが、辻村作品を読むと、なんだか無性に文章が書きたくなるんですよね…。ブログ書いててよかったと思います(笑)今回は以上です! 

図書室で暮らしたい

図書室で暮らしたい

 

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